神山に学ぶ田舎町でIT企業するポイント

徳島県は、人口6000人の小さな町に「神山」にある、古民家を再生してIT企業のサテライトオフィスにしたとして話題の「えんがわオフィス」に視察に行きました。

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えんがわオフィスは、
東京恵比寿で活躍するIT企業株式会社プラットイーズサテライトオフィスとして建てられました。



自然災害のバックアップオフィスとして


東日本大震災3.11の後、東京での計画停電が実施されましたが、停電はそのままビジネスに直結する被害があるのがIT企業。東京電力と別のエリアにバックアップオフィスを検討し始めたのが神山との出会いだったとのことです。
いわゆるBCP(事業継続計画)として、徳島県神山のサテライトオフィス「えんがわオフィス」が誕生しました。

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古民家をリノベーション


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地元に古くからある古民家を再生して、IT企業のサテライトオフィスに生まれ変わりました。

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実に2m超の広い縁側(えんがわ)をメインの売りとした母屋の他に、「蔵」を改築したオフィスや、アーカイブ棟と呼ばれるサーバールームの建物が別にあります。

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外観こそ、炭焼きの壁や木造の造り、かわらの屋根が「古き良き日本の家屋」を感じさせますが、
内部はパソコンとデスクと映像モニターが並び、IT業務の効率を優先した作りのギャップが、視察に来たシステムエンジニアの私を興奮させます。

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農業体験ができるIT企業


視察で感じた違和感に農作業具がありました。
草刈り機や作業手袋や長靴、チェーンソーまで・・。大量の薪が縁側に干されていましたが、これらはみんなで、丸太の状態からチェーンソーで切り出したもので、薪割りして、ストーブなどに使用するとのことです。

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えんがわオフィスとして、田んぼも所有して、稲作体験までできるようです。
「チェーンソーなどは、最初が難しいけどすぐにみんな扱い慣れてますね。」とのことで、ガテン系エンジニアになれてしまう特典があるようです(笑)



働く場所に自由な選択を


東京のサテライトオフィスということですが、株式会社プラットイーズには「東京と徳島とは、自由に行き来してよい」のルールがあるようです。
代表の隅田氏の曰く、「東京のオフィスから徳島へ行くとなると”左遷”のイメージが付くのが嫌だった」とのこと。
同じ部署同じチームでも、上司が東京・部下たちは徳島、そのまた逆もしかり、という状況が自然な文化になっているとのこと。

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神山に学ぶ「地方でIT」という選択肢


えんがわオフィスのみならず、東京や大阪などの都市部を本社とする企業のサテライトオフィスが、神山にはいくつかあります。
業態や用途も様々で、えんがわオフィスのようなBCPからスタートしたものだけでなく、
地方の安価なコストを活用した制作体制を実現するための、いわゆる「ニアショア(ニアショアリング開発)」のための事業所もあります。


本店を徳島とせずに、あくまでサテライトオフィスとするポジションだけでなく、
本店移転したり、iターン移住をして神山で起業する選択肢もあります。



神山のケーススタディは特殊なものなのでしょうか。


高品質光ファイバーによるインターネットが配備された神山の”特殊”な行政の取り組みと地域性が、
そんな広い帯域ネット環境をまさに必要とする映像屋さんである株式会社プラットイーズを惹き付け、
えんがわオフィスが実現した、という”奇跡的な事例”なのでしょうか。



クラウドソーシングが発展を続ける昨今、「場所を選ばない働きかた」が注目されてます。
「ノマド」というトレンドワードが出て、賛否両論、様々な意見や議論もありつつ、都市部に集約されていたビジネスに変化が出て、面白い社会になってきていると思ってます。



「田舎町でIT企業する」として、神山は、特殊なケースでもなく、奇跡でもなく。
全国のどんな地方にも適用・再現可能なビジネスのフレームワークになりうると感じました。



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ただ、それにしても、神山というネーミングは、それだけでインパクトがあって印象に残りやすいですよね。
ズルいな〜と感じました。(笑)